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書評 「北朝鮮を知りすぎた医者 国境からの報告」 草思社 刊 By Dr. Norbert Vollertsen ノルベルト・フォラツェン 著 松浦 清 評

 本書は、医療活動のため北朝鮮にNGO・カップナムーアの医師としてとして医療活動に参加し、やけどの患者に自らの皮膚を移植した功績で、国内の自由な移動が許される特別な待遇を得たノルベルト・フォラツェン氏の日本で発行される2冊目の本である。

 この緊急医は、民衆への抑圧体制と悲惨な現状を知るにつれて次第に批判を強め、「型にはまらない」行動で、ついに国外追放となる。そして猛然と人道と人権に対する北朝鮮当局者の犯罪を告発するに至る。

 

 第一作「北朝鮮を知りすぎた医者」は北朝鮮国内での出来事を中心に著述していたが、本書ではさらに緻密な分析と新しい事実が明かにされている。

 多くの人々に注目を引くのは、平壌で多く見たというアラブ人の姿だろう。アメリカ同時多発テロ事件と北朝鮮について、フォラツエンは勿論証拠をつかんでいる訳ではないが、何らかの関わりを明確に匂わせている。

 また、マイケル・ジャクソンのヒット曲で踊るダンサー、欧米そのままのダンスフロアと豪勢な料理、アルコールが並べられた特権層の姿と、一方で貧しい民衆の姿との落差ははまさにブラックユーモアという言葉では尽くせないものがある。 

 

 これまで私(松浦)はフォラツエンの講演を日本で数回聴いたことがあるが、必ず彼が付け加えるのは、自分は北朝鮮の民衆が本当に好きであるということ、しかし強制収容所のような物を作り上げ、国民を飢えさせる体制は決して許せない言う2点である。

 しかも、彼が強制収容所について断固たる確信をもって語るのは、国内での民衆の恐怖と共に、治療を通じた北朝鮮難民との対話の中からあの体制がどのようなものであるかを「知り過ぎるほど知った」からなのだ。

 

 本書の第7章から9章にかけて、難民問題、収容所問題について語っている。

 まず人道援助を国境地帯で手初めに行い、次に孤児院や難民キャンプを作ることによって、北朝鮮の人々があの体制から集団で逃げてくることが出来るようにしたい、というのが最初の発想だった(東ドイツの例から考えついたという)。

 そして難民の想像以上に悲惨な状態と、中国警察の残酷な取り締まりを見た彼は、中朝国境を強引に越えて北朝鮮にわざと逮捕され、さらなる抗議行動を起こそうとして、同行のジャーナリストに制止される。

 

 150人余りの難民を治療し、彼らと対話し、そしてフォラツエンは「北朝鮮の医療」のためには何が必要かを考える。

 彼の一つの結論は「情報は世界を変えることが出来る」という物だった。記者会見、テレビ、書籍など様々なものを通じてメデイアと接触し、中朝国境難民の現実を世界に伝えることによって、独裁制を倒す一翼を担えるはずだ、と主張する。

 最終的には、金正日を「国民殺害の罪」でハーグの国際司法裁判所に引き出す事が目標である。

 そのためには、国際的なNGOの北朝鮮人権保護を目的とした連帯が必要だ。彼のこの提案は、私達難民基金がこれまでに微力ながら行って来たこと、そして今後の幾つかの計画と大いに共通するものがあると思う。

 

 最後にフォラツエンは言う。北朝鮮に対しては「何でも、そして何もかも一度にやる。太陽政策、強硬論者流アプローチ、外交接触、経済協力、全てを組み合わせる。

 常に北朝鮮の人権問題との対決を怠らない。そして、場合によってはさらに強硬な抗議行動、そのほか考えられる全てを動員する。こうして相手を混乱させる。彼はこれを「全天候型政策」と呼ぶ。

 

 「交渉しないこと-行動あるのみ」決意と勇気に満ちた熱血医の一冊である。

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