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武漢肺炎(新種コロナ)が北朝鮮に及ぼす影響

(私は、北朝鮮で2006年まで病院長をしていたが、現在の北朝鮮の衛生防疫体系と医療治療状況は大差ないと見ている。)

 

北朝鮮の衛生防疫体系の特性は“党の医学的方針は予防医学”と明示され、衛生防疫体系は立派に分担されている。

中央防疫委員会道衛生防疫所郡衛生防疫所の体系で構成されており、衛生防疫所は医療機関の医者担当区域制 [1]の医者と緊密に協力して衛生宣伝、接種、伝染病予防事業を洞、人民班、家庭まで伝染病と病気を調査する体系が具体的に確立されている。

衛生防疫所は衛生防疫課、寄生虫課、伝染病課、実験室で構成されている。

 

北朝鮮の急激な経済の落込みと非衛生的な現実でも防疫に有利な条件は次のとおりだ。

1990年中盤の‘苦難の行軍’で全てが凍りついた北朝鮮で汽車とバスをはじめとする交通運行の劣悪性は伝染病感染速度を遅延させる。独裁者の命令一つで全国が動く北朝鮮は、遮断と封鎖、隔離が最も容易なだという特性がある。波のよう押し寄せる武漢肺炎の伝播を最小化することができる有利な条件である。

 

1990年中盤から始まった“苦難の行軍”は、北朝鮮の衛生防疫事業にも大きな変化を起こした。

北朝鮮の医療設備は7080年代の設備であり、老朽化と故障で使用出来ずにいる。また、伝染病確診(確定診断=definite diagnosis)に必要な試薬不足で早期摘発ができない。臨床症状に基づいた診断が基本であり、感染が疑われる場合は即自宅隔離だが、(医療機関は)傍観視して自体治療(患者自らが市場で薬購入して治療)することで生死の自然結果を招く。

それだけでなく、予防薬不足で体系的な接種が行われず、薬品供給の絶対的減少と飢餓は免疫欠乏をもたらし、弱い病原菌でも厳重な結果をもたらす。

 

北朝鮮では伝染病治療も深刻な問題として提起される。

風邪をはじめとする、サーズ(SARS-CoV)、マーズ(MERS-CoV)、武漢肺炎ウイルスによって合併する肺炎症状治療剤が絶対的に不足し、個人が市場で薬を購入して治療することに依存している。

原因治療はもちろん、抗炎症治療、輸液治療(水分・電解質栄養素などを、点滴静脈注射などにより投与する治療)、栄養療法をはじめとする症状治療も最下水準だ。

 

北朝鮮が、サーズとマーズ伝染の時よりも武漢肺炎に対して強力な対策を講じる理由は何か?

伝染病が一つもない社会主義祖国の偉大性を広く知らしめるのは、すでに党の方針である。

北朝鮮の友邦国である中国との航空機全面運行中断と国境封鎖は、現在の国民の飢餓と苦難に対する不満をコロナウイルス拡散と同じ災難だと思わせることにあるのではないか。

現在、予防と治療対策が一つも確立されていない北朝鮮のお寒い実情で、武漢肺炎確定患者が発生すれば防疫と治療は真に難問題になるだろう。

世界では、北朝鮮といえば朝鮮民主主義人民共和国平壌を意味する。

北朝鮮を訪問しても平壌、世界各国の記者が行ける所も平壌、集団体操も平壌、万寿台銅像も平壌、平壌だけ健在ならば朝鮮が健在なことだ。

故に、常にそうであるように伝染病が発生しても、大会をしても平壌に対する検問・検疫は何倍にも強化された。

‘革命の首脳部を命を懸けて擁護保衛しよう’、‘平壌は朝鮮の心臓’という党のスローガンがあるように、平壌は朝鮮の顔なので平壌の検疫はさらに強化されただろう。

 

ならば、国際社会は北朝鮮の伝染病予防と治療のために何を支援すべきか。

今、韓国では1時間以内で診断できる試薬が開発され、現在31人の疑わしい患者を短時間で確診した。防疫事業はその国の政府の役割であり、患者の診断検査と治療は国家の技術に比例する。

 

北朝鮮の場合、武漢肺炎患者が発生しても確診できる診断試薬がないため武漢ウイルス感染による死亡なのか肺炎による死亡なのか区分できる方法がない。

 

もし、北朝鮮に人道的目的で衛生防疫事業物資を支援するならば、診断検査試薬の支援が優先であろう。次に、確診患者や類似症状の患者のため、各種抗生剤、解熱剤、輸液剤、ビタミン剤をはじめとする治療薬品が必要だ。何よりも患者のための栄養剤と食糧が必要だが、実際に食べなければならない患者に対する食糧供給は不可能だ。すべての食糧類支援は、軍隊、保衛部、保安省、党にくすねられるが、治療薬は患者だけが必要としていることを肝に銘じなければならない。

 

また、武漢肺炎ウイルスに関した情報を国際社会が北朝鮮に提供しなければならない。

武漢肺炎ウイルスの特徴、宿主、伝染経路、潜伏期と活動期、治療対策と防疫対策に対する国際社会の経験と知識を提供しなければならない。

 

武漢肺炎は北朝鮮国内に拡散して数千名の軍人が隔離された、という説がユーチューブで提起されているが、北朝鮮は労働新聞を通じて一件も確定患者発生はないと発表しているが、北朝鮮当局の真の報告がある時にその真相は明らかになる。労働新聞をはじめとする統計は信じられない情報だ。北朝鮮は独裁国家であり、国民の健康のために努力することはあり得ない。

 

万万が一、北朝鮮政府が真に国民のために伝染病防疫と治療に臨むなら、国連をはじめとする国際社会に北朝鮮内部の実態を報告し、実情に合う対策をたてて国連と各国の支援を受けることが最も望ましい。



[1] 「戸担当制」ともいい、医者が人民班の地域住民(地域によって異なるが1,0001,500)に対し、衛生防疫所の下で衛生宣伝や防疫教育、防疫活動を行う制度。

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