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【News111】北朝鮮非難国連決議の共同提案不参加に思う 田平啓剛

 

国連人権理事会決議を12年連続で採択

 2019年3月、スイス・ジュネーヴで開催中の国連人権理事会(47ヶ国)は、その会期末の22日、北朝鮮の人権状況を強く非難する欧州連合(EU)提出の決議案を12年連続で採択した。決議では、「国家の最高レベルで決めた政策に従って人道犯罪が行われてきた」と指摘しており、会合を欠席した北朝鮮の反発は必至と見られている。

 尚、採択前に、中国とキューバが「対話が必要な時に圧力と対立をもたらすだけだ」と反対し、全会一致とはならなかった由である。

 昨年まで11年連続で共同提出してきた日本は、拉致問題解決に向けた日朝対話を狙い、対話の糸口を模索するべく、今年は提案国にはならなかった。

 

政府の対応 - 拉致問題解決の環境整備のため

 これに先立つ12日、安倍首相は拉致被害者達との面会の場で、「あらゆるチャンスを逃さない決意で、最終的には私自身が金委員長と向き合わなければならない」と強調した。翌13日、菅官房長官は「米朝首脳会談の結果や、拉致問題等を取り巻く諸情勢を総合的に検討した結果として、北朝鮮人権状況決議案を提出しないことにした」と表明した。

 この対応の裏には、拉致問題の解決に向け環境整備を図るため、北朝鮮への譲歩や融和姿勢を印象付け、日朝交渉を再開させ、更に進展させたいとの思惑がある。政府・与党関係者によると、これは安倍首相の強い意向を踏まえたものだともいう。

この思惑や意向の基礎として、「北朝鮮は国際社会からの人権問題についての非難に神経を尖らせている」とか、「日本が国連人権理事会で北朝鮮批判のトーンを抑えれば、日朝交渉再開への呼び水になり得る」との政府判断があったという。

 人権決議そのものには日本政府は賛成し、輸出入の全面禁止等、4月に期限を迎える日本独自の経済制裁も延長する方針である。対話の可能性を探りつつ、圧力路線で国際社会との協調は継続する。今秋に予定される国連総会(第3委員会)でも、北朝鮮人権状況決議に政府は引き続き賛成票を投じるであろう。

しかしながら、この政策変更には、当然、与野党から疑問の声が挙がった。政策の一貫性、継続性を重視する外務省からも異論が出たが、首相官邸に押し切られた模様である。

 

北朝鮮の立ち位置に対し共同提案を継続すべき

 一方の北朝鮮側は、同じ13日、「朝鮮中央通信」の論評を通して、人権理事会で、日本側から拉致問題の解決に向け国際社会の支持を求める呼びかけがあったと指摘しつつ、「日本が騒ぎ立てている拉致問題は久しく前に解決済み」と改めて非難した。

執拗に「拉致問題は解決済み」と繰り返す北朝鮮にとって、今回の非難決議案提出の見送りは、「日本が漸く我が国の主張を受け入れるようになった」程度の認識かもしれない。また、「日本は『対北圧力維持』と『拉致問題提起』を堅持してきたが、これで大人しくなるだろう」位の受け止め方かもしれない。一筋縄では立ち行かない対北朝鮮外交では、一切の甘やかさは禁物である。

 とすれば、日本は拉致問題解決のためにも、断固として、北朝鮮非難国連決議の共同提案を継続すべきであった。

 

人類共通の普遍的人権

北朝鮮における非人道的人権問題に終止符を

 ここで私が指摘しておきたいのは、北朝鮮非難国連決議は、何よりも北朝鮮国民に対する人権保障であり、北朝鮮における非人道的な人権問題に終止符を打つことに、その最大の目的があることである。

 我が国にとって、或いは1人でも被害者のいる国にとって、拉致問題解決の重要性は論をまたない。国益擁護の使命を有する国家にとって、拉致被害者の奪還と、その加害者の処罰は至上命題である。

 しかしながら、より普遍的に人権の擁護に努めるべきことが、人類共同体の一員として我々に課せられており、北朝鮮非難国連決議は、国連人権理事会においては12年連続で、また国連総会においては14年連続の採択がなされている。

 日本政府は過去、両決議において、より主体的な提案国として関わっていた。今回、国連人権理事会において、そうでなくなったということは、小手先の政策判断で普遍的な価値に国益を優先させ、人権尊重の精神を後退させた、という誹りを免れない。

これが是か非か、大いに議論があるところであるが、私は全ての国益をも包摂する人類共通の普遍的な人権をこそ至上の価値として捉えたい。

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