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招待講演「北朝鮮難民問題とアメリカでの取組み」 ……………….スザンヌ・ショルテ

 米国防衛フォーラム財団会長であるスザンヌ・ショルテさんとの初めての出会いは今年2月に東京で開催された北朝鮮人権関連の国際会議の場であった。国際会議などという大それた催しに出席して既に十分気後れしていたところにもってきて、彼女が英語で話しかけてきたので私は完全にあがってしまってろくに返事もできなかった。当日、議長まで務めたくらいだから、彼女はこの世界の有名人に違いないと私はそのように思ったのだった。その彼女が7ヵ月後に当基金の総会でスピーチしてくれることになろうとは!

 今回、7ヶ月ぶりに再会して彼女から開口一番「あなたに未だ100ドル渡していないでしょ、今度こそ渡さないと」というコトバが出た時、私は「えっ?」と一瞬戸惑ったが、すぐに記憶が甦り、すっかり感激してしまった。

 2月の国際会議で名刺交換した際に、彼女の "Do you accept 100-dollar cash?"(100ドルの現金寄付の申し出)という問いかけに私が "Oh, yes!"と答えたところで会話が中断され、そのまま7ヶ月以上が経過したのだった。なんと彼女はそのことをしっかり覚えていてくれたのだ。

 この1件はショルテさんのお人柄の一端を表わすに十分なエピソードであると私には思える。

 当基金にも惜しみない協力の手を差し伸べてくれつつあるショルテさんのスピーチを、その訳文から以下に部分的に抜粋してみた。

(文責 まちこ)

 

私が北朝鮮難民問題にどうして関わるようになったのか、そして今、どのように取り組んでいくべきなのか

 

 私がこの北朝鮮難民問題に初めて関わりを持ったのは、1996年に一人の北朝鮮亡命者が米国に入国できるように行動を起こしたことに始まります。防衛フォーラムは、1998年に北朝鮮政治犯収容所の生き残りの人達を初めて米国に招きました。その後、北朝鮮からの難民の数が増えるに従って防衛フォーラムもこの難民問題との関わりを深めてゆきました。

 ここに、私がいつも忘れずに記憶している2つの数字があります。それは「42」と「391」という数字です。これは現在、北朝鮮で死んでゆく人たちの数を最も少なめに見積もった推測値で、42人が政治犯収容所で死亡、391人が餓死する人の人数です。この人数は最低限の死者数に基づくデータとして知られているものなので、実際にはもっとはるかに大きい数字であると思います。これはつまり北朝鮮金日政権が原因で毎日433人もの罪の無い男女子供達が死んでいることを意味します。このように北朝鮮は、金正日政権により自らの国民を日々大殺戮している国なのです。

 北朝鮮難民の当面のニーズに応じるためには政府、NGO、個人の全てのレベルにおいて中国側に北朝鮮難民の強制送還を止めるよう要求することが必要です。また、中国側に対して、UNHCRが北朝鮮と中国の国境に調査に入ることを許可するよう要請を続行する必要があります。中国がUNHCRの調査を受け入れるべきことは国際社会でも合意されておりますが、つい先日、米国の上院下院の両院において、1951年の難民の地位に関する国連条約および1967年の難民地位に関する協定を遵守するよう中国に要請する決議が全員一致で可決され、この決議により、強制送還の中止、UNHCRが北朝鮮避難民の調査に入る許可の付与が中国に対して要請されました。

 中国にこのような要請を受け入れさせるためには経済面での戦略が考えられます。

 中国に対し、自由世界市場への参入か、それともこれまでの邪悪で腐敗した全体主義体制を支える政策を続けるのか、どちらかを選択するよう求める必要があります。中国が自ら批准した国際条約を遵守させる目的でこのような経済戦略をとることに米国政府が乗り気でないなら、自由世界のみんなが中国製の製品を一切ボイコットする不買運動を呼びかけるべきでしょう。

 中国が国際社会の圧力に反応することが最近の事件で明らかになりました。

 今日こちらにアメリカから参加されているOOさんと私は、今年5月に瀋陽で起きたハンミ一家の日本領事館への亡命事件に関わりました。この作戦は当初の計画どおりにはいかず、皆さんもご存知のように中国公安にハンミ一家は捕まってしまいましたが、このケースでは、この一家を取り返すべく日本政府と日本国民が抗議の声をあげたことによって一家の命が救われたと確信しています。

 これは前例の無いケースです。と申しますのは、近年において中国が拘留中の北朝鮮難民を第三国に行くことを容認したのはこれが初めてのケースだったからです。最近のその他の例すべてにおいて、難民はスペイン、ドイツ、韓国等の政府の保護監督下にありました。いずれにしても中国がハンミ一家を解放したのはまさに日本による抗議の結果であることが明らかにされました。

 防衛フォーラムでは、難民キャンプ支援に意欲的な意思表明をした11の組織からの手紙を米国上院および米国議会に提出することができましたが、北朝鮮難民救援基金は、このような協力依頼に対して一番乗りに反応して下さったグループの一つであり、支援表明のお手紙を頂いたことを私は嬉しく思っています。

 現在のところ、米国歳出予算案に、難民用資金追加額8千万ドルが盛り込まれておりますが、最終予算の採決は来月まで待たねばなりませんので、この現在の資金レベルを維持するべく防禦を続けてゆくつもりです。上院側は米国国務省に対し、この上乗せ資金は「北朝鮮難民および亡命者の人権と尊厳を守るために使用されるべきものであり、難民キャンプ設営、支援組織への寄付その他の形で使用すること」という一言を添えました。

 本日ここにアメリカから参加されているDr. Namは、難民キャンププロジェクトの下準備作業に携わっている方で、北朝鮮難民支援を促すために米国の下院歳出委員会の議員との会議に参加しました。

 米国では北朝鮮難民に対し2つの取り組みが行われています。1つは、サム・ブラウンバック上院議員によるもので、北朝鮮難民に「ラウテンバーグ修正条項」の地位を与え、米国への入国を容易とするものです。同修正条項はもともと、ソ連からのユダヤ人脱出を支援するものでした。

 もう1つは、クリス・コックス下院議員によるもので、米国政府、日本政府、その他同盟国の政府に対し、北朝鮮難民に一時的な最初の避難地を保証する政策を求めるものです。これが実現すれば、北朝鮮難民は、このような政策がとられている国ならどこでも安全に入国でき、一時的に避難することできるようになります。また、北朝鮮難民を受け入れた国は、難民を安全な定住地まで輸送する費用を受け取ることができます。

 この政策は、ベトナムのボート・ピープルを支援するために1970年代後期に策定されたものです。

 また、日本では中川正春議員など7名の国会議員が「北朝鮮難民ならびに人道問題に関する国会議員国際フォーラム」を結成しました。この日本の国会議員は、韓国の国会議員と協力し、米国の国会議員と手をむすぶまでになっています。この日韓米の議員グループは、中国に対し北朝鮮難民の強制送還を止めるよう、また、UNHCRに対し北朝鮮難民に制約のない安全な環境で接触できるようになるように、そして北朝鮮難民のために難民キャンプを設立するように働きかけています。

 そのほかに私達が取り組もうとしている課題の中には、全ての北朝鮮難民と強制送還者についてデータ・ベースを作成するということがあります。このデータ・ベースが作成されれば、ほぼリアルタイムで、かれらがどこにいるのか分かります。また、議員、貴団体のようなNGO、ジャーナリスト、人権活動家は、個々のケースの状況を知ることができるので、拘束されれば釈放を求める、あるいは送還されればその現状を問い合わせることができるようになります。たとえば、UNHCRにより難民の地位が認められたにもかかわらず、2000年1月に北朝鮮に送還された7名の脱北者のケースでは、ロシアと中国は難民の地位を認められた彼らを北朝鮮に送り返すという恐るべき非人道的行為を行いました。彼らの身には何が起こっているのでしょうか。彼らは生きているのでしょうか。我々はいつもそのことを尋ねるべきです。彼らは人間であり、私たちは絶対に彼らを忘れるべきではありません。

 横田めぐみさんの父親の滋さんや母親の早紀江さんがめぐみさんに強い愛情を寄せるように、私達も同じように北朝鮮の兄弟・姉妹に強い愛情を注ごうではありませんか。

 これから行わなければならないことを考えると、身がひきしまる思いがしますが、わたしたちがたゆまないでいれば、北朝鮮の人々はいつか自由を得るのです。 

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